細胞シート工学
細胞シートとは
当社の温度応答性細胞培養器材UpCell®を使い、細胞をその器材表面でコンフルエントな状態になるまで増殖させますと、培養細胞を一枚のシートとしてはがすことができます。私どもはこのシート状の培養細胞を「細胞シート」と呼んでおります。従来、器材表面に付着し、増殖した細胞を器材表面から回収する際にはタンパク質加水分解酵素が使われていたため、培養細胞は個々の細胞となっていました。そのような中、東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授・特任教授は従来技術とは全く異なるコンセプトの「温度応答性細胞培養器材」及びそれを利用した細胞培養方法を開発し、細胞シート工学という新しい分野を開拓しました。当社はこれまでその器材の製品化を積極的に取り組んでまいりました。
細胞シートの特長
UpCell®は温度応答性ポリマーがナノメートルレベルで固定化された表面(ナノバイオインターフェイス)を持っています。この表面で従来技術のように酵素処理を必要とせず、培養温度を変えるだけで培養細胞を回収することができます。得られた培養細胞は酵素処理を受けていませんので、細胞と細胞の間にあるタンパク質を壊さないまま一枚のシートとして回収されます。また、培養中に細胞が器材表面との間に形成させた接着性タンパク質も壊されず保持しているため、得られた細胞シートは生体組織へ速やかに生着し、さらに、複数の細胞シートを積層させ細胞シート同士を接着させることもできます。しかも、それらの細胞シートは酵素処理を受けていないので細胞本来の機能も失われることなく保持しているという点も大きな特徴です。
細胞が温度変化のみで剥離・回収が可能
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このシャーレを用いると、細胞の回収に際して従来のようなトリプシン等の酵素を用いる必要が一切ありません。トリプシンは細胞間の結合因子や接着因子を破壊し、細胞に大きな傷害を与えます。
再生医療のプラットホーム技術としての細胞シート工学
細胞シートは、生体内のさまざまな組織、臓器の細胞を使って作製することができます※。このような細胞シートは移植用組織として、単独で使用したり、他の細胞からなる細胞シートと組み合わせて使用したり、さらには細胞シートを一枚で使用したり、複数枚の細胞シートを積層させて使用することで様々に設計できます。私どもはこうした細胞シートを活用した技術を細胞シート工学と呼んでおります。
※細胞は従来の方法に従って培養することができます。但し、一部の細胞、培養条件で培養細胞を剥離させられない場合があります。詳しくは当社へお問い合わせください。
UpCell®からの細胞シート剥離およびトランスファー
細胞シート工学の各再生医療分野への展開
この細胞シート工学を活用し、当社は複数の大学医学部と連携して、再生医療製品の研究開発に取り組んでおります。現在、節軟骨細胞を原料に細胞をシート状に作製する軟骨細胞シートの早期事業化を目指すパイプラインとして開発を進めております。
お問い合わせ
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