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 プロフィール
1990年
奈良県立医科大学医学部卒業
1996年
奈良県立医科大学大学院医学研究科卒業
1996年-1997年
済生会奈良病院 外科医員
1998年-2002年
米国ワシントン大学医学部(小児科)および米国スタンフォード大学医学部(ヒト遺伝子治療プログラム)シニアポストドクトラルフェロー
1999年-2001年
日本学術振興会 海外特別研究員
2003年-2007年
奈良県立医科大学 消化器・総合外科 助手
2007年-現在
東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 特任准教授 、消化器外科学 特任准教授(兼任)
参考文献
Ohasi. K., Yokoyama, T., Yamato, M., Kuge, H., Kanehiro, H., Tsutsumi, M., Amanuma, T., Iwata, H., Yang, Y., Okano, T., and Nakajima, Y.
Engineering functional two- and three- dimensional liver system in vivo using hepatic tissue sheets Nat. Med. 13, 880-885 (2007)
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(2008年4月9日更新)
ユーザーインタビュー第一弾
「細胞シート工学で第二の肝臓作製に挑む!」
東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 特任准教授
消化器外科学 特任准教授(兼任)
大橋 一夫先生
Kazuo Ohashi, M.D., Ph.D.
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UpCellを用いて作製した肝細胞シートを、マウスの背中に貼付して第二の肝臓を作製し、200日以上もその機能を保つことに成功した大橋先生。細胞シートを複数枚重ねることによって肝臓組織を3次元化させ、タンパク質の発現量をさらに高めることにも成功されました。その成果は2007年7月の『Nature Medicine』に掲載されました。大橋先生に細胞シートを用いた研究の成功の秘密、そして将来の肝細胞シートを用いた治療方法についてお話を伺いました。
スキャホールドを用いず細胞間接着を制御
■細胞シート工学にご興味をもたれたきっかけについて教えてください。
大橋先生(以下省略):肝臓の細胞を使って組織を作ることを始めたのは1997年です。一番難しいと思ったのが、細胞と細胞をいかに接着させるかということでした。従来の組織工学では、細胞と生分解性の高分子、いわゆるスキャホールドを接着させることにかなり集約されますよね。肝臓関連分野でも細胞とスキャホールドを接着させることは可能になってきていますが、細胞と細胞をどのように接着させるかという点が制御できていませんでした。肝臓に関しては、細胞同士がきれいに接着している必要があるんですよ。
アメリカにいるときにいろんな論文を読んで、当時の東京女子医大の論文からこの技術(細胞をシート状に回収する技術)を肝臓の細胞に応用することができれば、私たちが一番制御したいところが可能になるのではないかと思って、日本に帰国してからすぐに東京女子医大、先端生命医科学研究所の岡野先生のところに行きました。それが、2002年の夏くらいかな。冬頃から温度応答性培養皿を提供していただいて、実験を始めました。
■初めてUpCellを用いて細胞シートを回収したときの感想はいかがでしたか?
正直なところをいうと、最初は全く回収できませんでした。ほぼ諦めモードでした(笑)。
色々培養条件を変えて試しながら、「どうせ剥がれないでしょう(笑)」とかいって動物実験していました。でも、ある時突然、細胞シートがイソギンチャクのように浮いていたんですよ(笑)。
■それは衝撃的でしたね。
それは、徐々に剥がれるようになってきたのではなくて、ずーっとゼロで、いきなりどーんって剥がれるようになったんですよ。
キーワードは「コンフルエンシー」「コーティング」「培養日数」
■剥がれるようになった(細胞シートとして回収可能になった)理由は何だとお考えですか?
細胞シート回収でキーポイントになるのは「コンフルエンシー」「コーティング」そして「培養日数」でした。
まず肝臓の細胞培養は非常に難しくて、ある程度以上密に播種すると、全然接着しなくなるんです。逆に「コンフルエンシー」が低い、あんまり粗な培養では細胞シートが破れたりして非常に扱いにくい。「コンフルエンシー」が90%以上になると扱いやすくなりました。次に「コーティング」ですが、血清コーティング、あるいは通常の血清入りのメディウムコーティング(コーティング=細胞播種前のプレインキュベーション)をすることで細胞の接着性を高める工夫をしました。この2つの工夫により、適度に密な細胞シートが作れるようになりました。それから何日目が一番剥がれやすいかという「培養日数」についても検討しました。
結果的にこの3つがキーでした。これ以外にも条件検討はたくさんやりましたけどね(笑)。これらを至適化していくと、ハンドリングしやすい、しっかりとしたシートがとれるようになったんです。
■細胞シートが回収できるようになるまで、ずっと諦めなかったというのはすごいと思います。その「諦めない」というモチベーションを維持された原因はなんだったと思われますか?
何だったんだろうなあ……。私たちは細胞の接着を制御する形で、組織工学をしたいと考えて、肝臓を作りたいと思っていました。だから、うまくいけば絶対に有効に使えるという確信があったんですよ。だから、やってみよう、やってみようと……。
■そうやって、諦めずに研究を行ったのですね。
肝細胞シートで様々な遺伝性肝酵素欠損症患者さんを救いたい
■先生は、2007年7月に肝細胞シートを作製し、マウスの背中の皮下に移植するという論文を『Nature Medicine』に掲載されていますね。これはヒトのどんな疾患を想定されているのですか?
まず、肝臓の機能が3000あるとすると、その中の1つの機能が遺伝的に欠損している疾患が対象になると考えています。例えば血友病は、血液凝固因子の産生が1つだけできない疾患です。欠損しているその1つの機能以外の2999は正常なわけです。同じく、1個の機能がないことによって、肝臓が大変になってしまう病気に、遺伝性肝酵素欠損症があります。病気の種類は多いですが、患者数が少ないこともあり、治療薬が確立していない状態にあります。今はこのような病気の患者さんは臓器移植が最終治療手段となっています。肝臓3000の機能をもった細胞を使って、3000の機能を提供できるわけです。だから、小さいモノしか作れないですけど、たくさんの種類の病気の患者さんに普遍的に応用できる治療方法になるはずです。
考え方としては要するに「発現する薬を処方する機能的細胞組織ユニット」を体の中に創るという概念です。
肝臓が悪くなると肝硬変になり、肝臓が小さくなりますよね。ご高齢になられると、お腹がタプンとしてきますね。こういう肝臓と離れたところでも、肝細胞シートを移植することで、肝臓の機能を補うことができると考えているんです。ここに腹巻きのような肝臓ができたりするといいかもしれないと思っています。
■腹巻き!?
肝臓の機能を補うためにね。移植した細胞シートと肝臓が離れていてもコミュニケーションして、肝臓の機能を補い合うことができるとずーっと、めっちゃ信じています。移植する場所は患者さんと一緒に決めるのがいいのではないかと思っています。そういうデータを積み上げ、4本程の論文を書いて、ようやくこの分野が認識されつつあります。最初発表したときは全く信じてもらえなかった。
■そうだったんですか!
ボクがやった実験結果はすごく特殊な、たまたまのチャンピオンデータじゃないかと……。でもようやく認識してくれる方が多くなってきました。
■ご苦労されてきたんですね。
苦労といえば、最初から最後まででした(笑)が、実験は楽しかったですよ。
研究補助員さんの方とかと4〜5人のチームでやっていましたが、剥がれるっていうセレモニーがあるので、長い実験でも苦にはならなかったですね。10匹の手術をするのに、30分が10回続くんです。300分の緊張が続くので、途中疲れてきますけど、アクセントになりましたね。チームでは、「サロンパスのような肝臓」って呼んでました。
将来の夢とUpCell
■先生の将来の夢を教えていただけますか?
2つめの肝臓をつくって、今救えない患者さんを救えるようになること!
■これからUpCellを使う方たちに一言お願いします。
細胞によって何を試行錯誤すればいいのかは異なってくるとは思いますが、温度応答性培養皿UpCellは細胞をやさしく制御できる唯一の方法だと思います。大学院生の方や初めて研究される方にはなかなかそのメリットが分かりにくいと思うんです。でも、ちょっと研究していくといかにその技術が大切かをすぐに実感できるようになると思います。第一、アイディアがユニークだし、方法も結果もこの器材でしか得られないものじゃないですか!だから、最初はうまくいかなくても、諦めずに至適条件を探して頑張ってください。
■先生、お忙しいところありがとうございました!
ご感想、次回インタビューして欲しい先生のご希望がございましたら、こちらにお願いします。
E-mail:info@cellseed.com
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